アピール:戦後70年,発達保障の提起から50余年,人間発達研究所創立30年の節目に立って,人間発達と相容れない『戦争立法』は許しません.

 政府は「戦争立法」の11法制,平和安全法制整備法案(自衛隊法等,10法の一括「改正」)と国際平和支援法案(新法)を提示し,5月14日に閣議決定を行い,5月15日に国会へ提出し,一括審議をすすめようとしています.多くの国民の反対が世論調査でも示される中,法案が審議されていますが,6月4日衆議院憲法審査会の与党側の参考人も含めて全員が「この法案は憲法違反である」と主張していることにも明らかなように,主権者である国民の声と憲法に対する重大な挑戦であると言わざるえない状況をつくっています.
 私たちは,人間発達研究所の創立から30年という節目に立って,戦争立法への反対を表明します.

1 日本国憲法第9条の人類史的意味をまもろう

 日本国憲法は,「戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する」という第9条をもっています.これは,ファシズムと軍国主義への歴史的総括として日本国民の願いがつくりだした条項です.世界的には,国際連合の「人間としての尊厳」規定,ドイツおよびイタリア憲法の発達条項など普遍的・包括的人権概念ともつながるものと言えます.
 「普遍的」とは,それがが存在し続けることに第一義的な価値を見いだしているからです.
 また,憲法前文の平和的生存権は,すべての基本的人権保障の基礎となる人権であり,戦争や暴力の応酬が絶えることのない今日の国際社会において,全世界の人々の平和に生きる権利を実現するための具体的規範とされるべき重要性を有する(日本弁護士連合会,2008年)ものと理解されているのです.
 こうした条項を文言はもちろん解釈においてもなくすことは,20世紀に人類が到達した歴史的到達への重大な挑戦であり,私たちはそうした動きに反対をします.

2.抑止力と「積極的平和」は「戦争」「威嚇」「武力の行使」の放棄と矛盾する

 日本国憲法第9条で放棄したのは「戦争」「威嚇」「武力の行使」です.今回の安全保障法制について安倍内閣は「積極的平和主義」に基づく抑止力の強化の必要性を繰り返し述べています.その実体の一つが自衛隊の機能強化になっており,能動的な自衛隊の影響力の行使がめざされています.
 いうまでもなく,それは,仮に「戦争」状態に至らずとも「武力の行使」「威嚇」であって,そのような憲法解釈を認めることはできません.

3.発達保障は戦争と相容れない

 UNDP(国連人間開発計画)はかつて,「軍事支出は人間発達のための貴重な資源を食いつぶし,人間の安全保障を損なう」(Human Development Report 1994)と明言したように,本法案によってもたらされる海外派兵による軍備拡大は人間発達のための基礎条件を根底から破壊します.
 また,日本の外務省ホームページには,「軍縮・不拡散と我が国の取組(概観)」(2012年2月)と題して,「経済的な観点からも,莫大な軍事支出は,政府の財政を圧迫します.軍事支出をできる限り抑え,経済開発や福祉などに優先的に国家予算を振り向けることができるような条件を整えることも,軍縮・不拡散外交に期待される効果です」と表明しています.
 私たちはこれらの指摘から歯止めのない地球規模の海外派兵への道は,発達保障の基礎条件を崩し,人間の生存と尊厳を根底から破壊することを危惧します.発達保障の提起から50年余,戦争のない平和な社会の維持と真の意味での連帯こそが,人間発達研究所の役割であることを改めて表明します.ゆたかな人間発達の実現,発達への権利の保障を願う人たちの研究・学習,その成果の普及をめざす私たちは,戦争立法に強く反対します.

4 私たちが自分のことばで
 こうした戦争立法の準備が進む中,民主主義への挑戦もすすんでいます.
 国立大学への日の丸・君が代の押しつけ,大学における軍事研究の利益誘導,などにとどまらず,意見や立場の異なる発言への封殺的な態度が国会内外でめだちます.私たちは,自由で率直な表明と話し合いの中でしか民主主義が存在し得ないことを知っています.また,科学・学問はそうした対話と討論によって過ちも訂正しながら進歩していくことを学んできました.
 今回の戦争立法の動きについても,こうした民主主義の営みを積み上げていくことによって,くい止めたいと思います.この声明もそのきっかけとなって,みなさんが自分のことばで平和と民主主義と人類の叡智を守るための声をあげてくださることを願います.

2015年6月13日
人間発達研究所 運営委員会


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